歩合制でちゃんと稼げる?タクシードライバーの給料の仕組みとは?

投稿日:2020年7月23日 | 最終更新日:2020年7月23日

「タクシードライバーは個々で営業活動をするけれど、給料はどんな仕組みになっているのか気になる」という方は多いのではないでしょうか?特に転職を検討中でタクシーの仕事に興味をお持ちの方などは、ドライバーの給料制を知っておくと参考になります。そこで今回は、タクシー運転手の給料の支給方法として王道となっている歩合制をわかりやすく解説します。まずは歩合制とはそもそもどのようなものなのかをご説明し、そのメリット・デメリットや現役ドライバーの平均給与まで、タクシー運転手の収入について網羅的にお伝えしていきます!

この記事を読んだらわかること

☑︎そもそも歩合制とは?
☑︎歩合制給料のメリット・デメリットとは?
☑︎歩合率とは?売上取り分のケーススタディ
☑︎現役タクシードライバーの平均給料とは?
☑︎給料の良いタクシー会社の選び方とは?

そもそも歩合制とは?

タクシードライバーの給料の支給方法は歩合制です。歩合制とは一定の比率で会社とドライバーが売上を分け合う方法で、この方法のメリット・デメリットなどは次章以降にも詳しくご説明していきます。一口に歩合制と言っても、会社によって制度内容が異なるので、まずここでは歩合制の種類について解説していきましょう!

歩合制にも種類がある

歩合制には次に挙げていく3種類があります。給料制はご自身がどんな働き方をし、どんなふうに稼いでいきたいかやどんな会社を選ぶかに関わる重要なポイントなので、求人応募する前に知っておきましょう。それぞれのメリット・デメリットは各タクシー運転手のキャリア・能力・考え方によって異なるため、それも併せてご説明していきます。

固定給重視のA型賃金

一般的な会社員のように定められた固定給を支給され、それを上回る売上を出した場合に歩合率に応じた歩合給がプラスαとして足される仕組みです。かつてはこのタイプでの支給もちらほら見られましたが、最近はほとんど採用している会社は見かけません。一定の給与は保証されるので営業努力が嫌いな社員には有難い仕組みである一方、自分の頑張りを収入に反映させたいやる気のあるドライバーには向いていないでしょう。

歩合のみで稼ぐB型賃金

固定給はなしで、歩合率に応じて売り上げた本人と会社側とが分配するタイプです。仮に月間80万円売り上げて歩合率が50%だった場合、単純計算で給料は40万円となります。腕に自信があり、タクシー会社を移籍する方などは、転職を機にこのタイプを採用している会社を選べば収入が上がる可能性も高まります。

ただし、完全歩合制の場合には万が一売上が出せなかった場合に収入がないということになるため、労働時間に見合う給与が保証されなければならないという労働基準法に抵触してしまいます。個人事業主対企業であれば完全歩合も可能ですが、業務委託契約以外には完全歩合制は事実上不可能となるでしょう。

AとBを合わせたAB混合型賃金

上述した2タイプを合わせたような支給方法です。一定の固定給は保証しながら、歩合給がメインとなった方式なので、頑張って売上を伸ばせば収入が上がっていくという意味では完全歩合であるBと感覚的に近いシステムとなっています。まだ大きく売上を出す自信がなく、全て歩合給ではあまりにも不安が大きい未経験の新人ドライバーの方にもこのタイプなら安心感が得られるでしょう。ただし、固定給部分が割と高額に設定しておいて歩合の部分の率を下げている会社中にはあります。

昨今は概ねタクシー会社がAB混合型

先述した3タイプの歩合給のうち、近年タクシー会社に最も取り入れられているのがAB混合タイプです。根本的に労働基準法の問題がありますし、ドライバーの生活を支えるという意味でも不安を解消するという意味でも、このタイプがベストと言えます。

歩合給の占める割合が大きい会社では、ドライバーの営業意欲を促すとともに、頑張った分だけ収入が増えるという納得感も得られます。抑え目にした固定給と歩合給を合わせることにより、必要最小限の収入を確保できるため、ドライバーのプレッシャーを軽減することも可能です。

歩合制給料のメリット・デメリットとは?

タクシー業界は、会社ごとに多少の違いはありながらも、歩合制給料がメインであることは間違いありません。先ほども解説したように、近頃では固定給メインで給料を支給しているタクシー会社はほとんど見かけることがなく、タクシー運転手になる=歩合制で稼ぐと言っても過言ではないのです。ここでは歩合制給料のメリット・デメリットについて解説します!

歩合制のメリット

歩合制のメリットは何と言っても、頑張って稼げば稼いだだけ給料の額に反映される点です。タクシーの仕事は、もちろん迎車などの営業努力が要らない業務もありますが、大部分はドライバー一人一人が自分自身の戦略や努力でお客様を獲得し売上を伸ばしていくため、その努力が収入に反映されないとモチベーションが上がりません。

歩合制は「頑張れば報われる」が形になった制度であり、乗務員の意識向上にも役立ちます。また、比較的導入している会社が多い「固定給+歩合給」の場合は、最低保証はありつつ歩合制のメリットも感じられるいいトコ取りの方法で、特に売上が伸び悩む新人時代には心の支えにもなるでしょう。

歩合制のデメリット

歩合制は売上が少ない月には辛いシステムです。それがドライバー自身の怠慢や努力不足であればまだ納得がいきますが、やむを得ない理由で休みが多かった場合や不況時、最近世間を混乱させた感染症の流行時など、勤務や需要が減ったせいで売上が下がった場合には手取りが減るだけでなく、気分的にも落ち込んでしまいがちです。

タクシー乗務員としてキャリアのない人が歩合制の割合が高すぎる会社に入ってしまうと、なかなか収入が上向かずに労働意欲が減退したり生活に不安を感じたりする原因にもなりかねません。常にプレッシャーにさらされ、それをストレスに感じる方もいるでしょう。歩合制とは本来、自分自身のスキルに自信がある人にとって非常に良い制度なのです。

会社ごとに給与形態が異なることにも注意

最初の章で解説したように、同じ歩合制にもいくつかのパターンがあり、入社した会社によって給与形態が異なるので、納得して乗務するには希望する支給方法を行っている会社で働くことが大切です。仕事ができるようになるまでは固定給の割合が高めの会社で乗務員を務め、稼げるようになって自信をつけたら歩合制の割合が高い会社に移籍するという手段もあります。

歩合率とは?売上取り分のケーススタディ

タクシードライバーの給料について話題にする時に、避けて通れないキーワードが「歩合率」です。ここでは歩合率とは何かを解説し、実際に数字を使ってシミュレーションしてご覧に入れます。歩合率に着目することも大事であるということがおわかりいただける内容となっています!

歩合とはドライバーの取り分を決めるための割合

歩合率とは、営業で得た売上について、タクシー会社とドライバーの”取り分”を決めるための分配率のことです。歩合率は会社によってもドライバーによっても異なりますが標準的なのは50%前後です。

よく見られる歩合率は40%台からで、平均的には50~60%となっています。仮に月間90万円の売上があった場合、歩合率が50%の契約であれば単純計算でドライバーの収入は45万円です。ただし、これが全て手取りとして手元に貰えるわけではなく、税金などが天引きされることも考慮に入れましょう。

歩合率1%の差も年収にしたら大きい

歩合率はほんの少しの違いでも、年単位の収入で考えると大きな差になるので、可能な限り取り分が多くなる会社に入れることが理想です。先ほど例に挙げたように、月間の売上が90万円で歩合率が50%であれば、ドライバーの取り分は45万円ですが年に直すと540万円となります。一方、歩合率が51%だった場合には年に換算すると約550万円となり、50%の場合と10万円の違いが出るのです。

ただ、後述しますが、歩合率が高ければ高いほど良いというわけでもなく、歩合率を高くするのに条件がつくこともあるので、新人ドライバーの期間は歩合率に一喜一憂するよりも、売上が上げられない時期の最低給与保証がどのくらいあるのかといったチェックをしておいた方が良いかもしれません。

売上によって歩合率を変える会社もある

歩合率は一筋縄ではいかないものです。売上額に応じた歩合率ランクが定められており、たくさん稼げば歩合率が上がる仕組みになっている会社も見受けられます。つまり月ごとに歩合率が変動するというわけです。

額による歩合率が細かく区分されている場合はまだいいですが、会社によっては区分がざっくりとしていて、「○○万円以上の歩合率は60%、それ以下であれば50%」のようにほんの少しの売上の差で取り分が大きく違ってきてしまう例もあります。

現役タクシードライバーの平均給料とは?

ここまでは、タクシードライバーの給料制である歩合制やそのメリット・デメリットなどを解説してきましたが、次は気になるタクシードライバーの実際の収入を見てみましょう。ここではタクシー運転手の平均収入や人による収入差、トップクラスのドライバーの年収例などをご紹介します!

タクシードライバーの平均年収

タクシードライバーの全国平均年収は約300万円です。これは会社勤めのタクシードライバー、いわゆる「法人タクシー」の乗務員の平均年収であり、経費以外は自分の収入となる「個人タクシー」の平均年収の場合は約350万円と少しアップします。

一般的な感覚では、平均年収300万円は高年収とは言えないかもしれません。収入を上げたくて転職を検討中されている方からすれば、思い切ってタクシー運転手に転身しても、この数字では現職の収入より下がってしまうのではないだろうかと不安になりかねませんよね。ですが、300万円という額はあくまで全国タクシードライバーの平均年収額です。

タクシードライバーと一口に言っても、その働き方や稼げる環境、さらには乗務員としてのスキルなどは千差万別で、稼げる環境の下で働いている人とそうでない人との収入差は大きく開いています。稼げる環境とはどのようなものなのか、次にタクシードライバー間の収入差の実情について解説します!

地域や働き方による収入差は大きい

タクシードライバーの収入差はさまざまな観点から分析することができます。それぞれの着眼点ごとに生じる収入差を見ていくことにより、「どうしたら稼げるタクシードライバーになれるのか」が見えてきます。具体的に解説しましょう!

働く地域による収入差

どこで営業活動をするかによってタクシー運転手の収入は大きく変わってきます。47都道府県別のタクシードライバーの平均年収を見てみると、最下位クラスの年収は200万円を下回っています。これは最上位クラスの半分以下の水準です。ちなみに例年トップクラスにランクインする東京のタクシードライバーの平均年収は約420万円で、全国平均を大きく上回っていることがわかります。

東京の平均年収が高い理由は、人口が多くタクシー需要が非常に高いことが挙げられます。平均年収が低い地域は、人口が少なくタクシーの台数もニーズも少ない傾向にあるのです。物価の違いもあるため一概に比べることはできませんが、東京・大阪・神奈川といった都会の中心部で営業するタクシーは稼ぎやすいという現状があります。

働き方による収入差

タクシードライバーは働き方の自由度が高い仕事です。もちろん、会社によって許容している働き方のパターンに違いはありますが、さまざまな働き方をしている人がいることは間違いありません。たとえば昼間だけ勤務している人や配偶者の扶養控除が適用される範囲で働きたい人などは比較的収入が少なくなりますが、割増料金や遠方までご利用になる乗客が増える深夜に乗務する人は昼間営業する人より収入が高い傾向にあります。

また、高齢者ドライバーが年金を需給している場合などは、受給額が減らされない範囲で働きたいために収入を調整することもあるため、そもそも平均年齢の高い職業なので、こうした背景が全体の平均年収を下げている可能性はあり得ます。つまり、バリバリ稼ごうと精一杯働いているドライバーと収入や時間を調整しているドライバーとは確実に収入差が生じるものなのです。

他にも、タクシー会社によっては副業を認めている場合もあるので、本業としてドライバー一本で生活していない人がいることも知っておきましょう。タクシードライバーの代表的な働き方は「隔日勤務」といって一日おきに勤務するスタイルです。1勤務あたりの拘束時間は20時間を越えますが、月に17日以上も休日があるうえしっかり稼げる効率の良い働き方と言えるでしょう。

営業能力による収入差

タクシー業界には、稼げるドライバーと稼げないドライバーがいます。稼げるドライバーは「いかに効率良く稼げるか」を常に意識しており、勤務中一貫して無駄な時間を作らないように気をつけています。売上目標を達成するために空車で走る距離を減らす努力をし、日々反省して反省点を次回勤務で改善します。これによって売上が右肩上がりに上がっていくのです。

一方の稼げないドライバーは、街中を流した方がお客様に出会える可能性が高い時間帯でも、ひたすら駅や空港の待機レーンで付け待ちしていたり、感じの悪い接客をしたりして自ら商機を逃していきます。稼げる人はいつでもタクシー需要が多い場所に移動していますし、需要が少ない時間帯に休憩を取ります。意識やスキルの差で売上は確実に変わり、売上額がそのまま給料に反映されるため、結果的に能力の高い人が収入を増やしていくこととなるのです。

トップクラスのタクシードライバーの年収

ここまででお伝えしてきたことをまとめてみますと、タクシードライバーは①稼げる営業エリアで→②稼げる時間帯に→③戦略的に営業することにより→トップクラスの収入を得られるということになります。

タクシー激戦区でありながら、タクシードライバーの平均収入が高い東京においてトップクラスの売上を誇るドライバーは、少なくとも年収500~600万円は稼いでいます。さらに上を行くドライバーであれば、年に800~1000万円程度稼ぎ出す人もいます。

給料の良いタクシー会社の選び方とは?

タクシードライバーと一言で言っても、その収入には営業する場所・働き方・能力によってかなり大きな収入差が生じることがここまでの解説でおわかりいただけたことでしょう。ドライバーが稼げる環境を整える要素としてもう一つ重要なのが、所属する会社です。納得の行く収入を得られるかどうかは、会社選びに大きく左右されます。詳しく見ていきましょう!

タクシー未経験者は堅実な選択をするのがおすすめ

他業種から転職してきた方や、新卒でタクシー会社に入ったばかりの経験もキャリアもない新人ドライバーに該当する方は、はじめからあまりハードルの高い条件提示をする会社よりも、歩合が占める割合が小さくとも、固定給を高めに設定している会社を選ぶのも良いでしょう。

数%の歩合率を比較して会社を品定めするよりも、教育・研修制度や福利厚生が充実しているかどうかといった点に着目して会社を選ぶ方が入社後に快適に仕事をすることができて、売上が伸びることもあります。仕事に慣れるまではノウハウを身に付けるための勉強期間ととらえる気持ちも必要です。

経験者なら売上に応じて歩合率が上がる会社がいい

堅実な給料制の会社で新人時代を頑張ってきてそれなりにスキルが上がってきたドライバーは、売上に応じて歩合率を上げてくれる実力主義の会社に思い切って移籍することが、収入を上げるきっかけになり得ます。売上がどれだけ多くても歩合率が変動しない会社では、かえってモチベーションが下がってくる場合もあるためです。

タクシー会社に所属してドライバーとして働いていると業界のことをよくわかったような気がしますが、よく知っているのは自社のことやちまたで耳にする噂くらいで、意外と他のタクシー会社の内幕はわからなかったりするものです。タクシー会社を移籍する際には、業界に太いパイプを持つプロのコンサルタントにご相談になると、期待どおりの移籍が現実のものとなる可能性が高まります!

未経験者は給与保証制のある会社を検討するのも良い

歩合制に不安を感じるタクシー業未経験者の方は、給与保証制度を採用している会社に入るのも一案です。まだ営業のノウハウが身についていない新人期間に最低給与を保証してくれるというものですが、それでも一定以上の成果を見せないければならないなど、条件を付ける会社も中にはあります。

また、給与保証制は実施していなくても、乗務員一人ずつがハイレベルな会社であれば、そのスキルの高さを活かした勉強会などを積極的に開催して新人の教育にコストをかけているケースも見受けられます。この方法ですと、生きた教育を受けて実力を上げていくことで、保証制に頼らなくても早く一人前になれるというメリットがあります。

【まとめ】タクシー会社の歩合制は会社ごとにルールが違う!

今回はタクシー会社の給料制についてさまざまな角度から解説してきました。結論としては、タクシー業界は歩合制メインで給料を支給しているものの、会社によって細かな制度や仕組みはそれぞれ違うということです。重要なのはドライバーやドライバーを目指す方それぞれがどんな働き方をしたいのか、自分自身の理想を見きわめることと言えます。その答えに応じて、個性あるタクシー会社の中からご自分に最適な一社を選ぶことがベストです。固定給の部分や歩合率といった数字だけに惑わされず、ご自身の成長段階を考慮に入れたり、長期的なビジョンを踏まえたりしながら会社を選ばれることをおすすめします。

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この記事のまとめ

☑︎タクシー業界では固定給+歩合制が給料制として浸透している
☑︎歩合率が高い会社が誰にとってもメリットが多いわけではない(未経験者は特に注意)
☑︎タクシードライバーの平均年収は300万円程度だがトップクラスなら年収800~1,000万円稼ぐ人も
☑︎タクシードライバーの年収差は営業エリア・働き方・能力差などによって生じる
☑︎自分自身が希望する給与体系を持つ会社を選ぶことが大事!
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